2007年7月19日木曜日

多摩川の変遷

博士です。

多摩川って面白い!

下流、中流、上流。どこから観察を始めても何かしらの生き物に出会えます。

この日もさっそくモクズガニのお出まし。川岸では夜にもかかわらずコイやテナガエビを狙って釣り人が賑わいます。

でも多摩川は今日までずっとこのような姿を見せていたわけではないのです。この川にも苦難の歴史がありました。

人間活動による河川環境への負荷が閾値を超えずにいたのは高度経済成長期以前。それまで多摩川は清流と呼ばれ、天然のアユやウナギ漁で生計を立てていた多くの川漁師や鵜飼いの姿が見られ、いきものにあふれていました。

しかし昭和30年代に入り河川環境は大きく変化しました。上流での奥多摩湖の出現です。奥多摩湖は小河内ダムによって堰き止められ水道用の貯水ダムとして作られた人造湖。当時、宅地開発に伴う人口増加と都市化による生活用水の需要が急増し、それを補うためにダムの貯水と河川からの取水によって多摩川の水量は大きく減少しました。そこに生活排水が大量に流入されることになり河川の汚濁が急激に進んだのです。また同時に、農業用水のために作られていた堰が次々とコンクリート化されることによって魚たちは遡上を阻まれ生息場所を追われることとなります。こうして多摩川で見られる魚は激減し、それをエサとする鳥たちも次第に姿を消していきました。
 
やがて時代は移り変わります。全国で公害問題が深刻化するなか、経済発展を何よりも優先させてきたこれまでの国政を見直し、人々が健康で快適に暮らせる国作りを目指す気運が少しずつ高まります。「かつてあった多摩川の自然を取り戻そう」、こうした動きの中、下水道の普及と下水処理技術の向上が相まって多摩川の水質はかつて例のなかった程の回復を見せ、いきものが住める環境を取り戻していったのです。

一時は取水制限の措置がとられるほど汚染がひどかった多摩川ですが、現在ではアユ、マルタ、ウナギ、カワセミなど一時姿が見られなかったいきものが容易に観察されるまでになっています。

さてさて、これからの旅でどんないきものが出てくるのやら。
楽しみです。

3 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

のぞ~るです^^
多摩川・・・ずいぶん河川環境がよくなってきている、とニュースなどでも取り上げられてるよね。
でも 本来の姿にはもう戻れない。
「よくなっている♪」と人間だけが喜んでいるんじゃないかな? なぁんて考えたり。
「人間は 他の生物(木や草や魚や鳥や虫やその他の沢山の生物)に生かされている」と
ジャックジョンソンは言ってました。
なのに われわれ人間は 生かせてくれているほかの生物を どんどん壊し 絶滅させてしまい
自分の首を絞めているんだよね。
でも これ以上同じことを繰り返したら いかん!
壊すのも人間 復活させのも人間しか出来ないんだもんね。

ふく さんのコメント...

■のぞ~る

おいっす。ふくです。考えさせられた。ちょい長いよ。よろしくぅ。

うん、本当の昔の状態?に戻ってるなんて、僕もまったく思ってない。日本に限らず、世界中みんなズタズタだよ。

けど、情報でしか知らんけど、過去の最悪に汚染されていた状況に比べると、多摩川は回復してきていると思うよ。おのぼりの僕でも何となくそう思う。これは素直に評価しないとね。

けど、仕方ないよ。そういう風に人間だけが喜んでたとしても。情報だけだと、わかんないんだから。丸子橋のところで実際に川入ったけど、汚ったなかったし、くっさかったよ。(笑)でもそういうのも、いいのか悪いのかは評価が難しいねん。人間にとって臭いことは必ずしも…やからね。

見えるところから、何とかしていくしかないんだよね。僕はそういこと実際に目で見て、感じるために、多摩川に出かけてます。本当のことを少しでも知りたいんや。

今日、藤野で聞いた話だけど。

藤野の野鳥が減ってるの。
何でやと思う?
あんなに緑があふれて、野鳥の声がたくさん聞こえるから、僕はわからんかったが、じつは、あの土地一帯は昔は山の中腹まで水田だったらしい。そこに蛙やらなんやらの生物がいっぱいいて、野鳥の餌がたくさんあったの。蛙がいたらヘビも増える。ヘビがいたら、猛禽類の鳥がくる。というつながり。水田、今、無いよね。最近少しづつ復活させてるそうだけど。
そして、森、木がいっぱい生えてるけど、鳥にとって大事な木、子育てしたり、ねぐらにするのに適した木があって、それは、樹齢を重ねた木ほどいいらしい。そういう木は、昔は別に気にならんし伐らなかった。けど、植林にともない、邪魔になるから伐ってしまったんだって。これは、日本全国のことだよ。

で、どうするねん!って今宵も飲むわけさ。へへ。田植え!田植え!田植え!かい。ね。

博士 さんのコメント...

博士です(ほんとは自ら博士だなんて名乗るのこっぱずかしいんだけど)

私事ですが今日までコメントに気がつかなかった。ごめんなさい。
「コメントあり」を知らせるメールが勝手にスパムメールと判断されてGmailの迷惑メールフォルダに入ってました。
オイオイグーグル。おたくからのメールでしょうが・・・。

のぞ〜るさん、ふくちゃんコメントありがとう!
確かに「環境の復元」って難しいよね。
生態系は放っておいても元の状態に戻るものもあれば、一度撹乱がおきてしまうと二度と元の状態には戻らないものまで、撹乱からの生態系の可塑性と言われるものは多種多様です。
それにいつの時代に戻せばいいのかっていう問題もある。

生態系が過去のよき時代に復元できれば良いことかもしれないけど、そうした判断も結局のところ人間の五感・判断基準に頼るしかない。
やっぱり人間中心に物事を進めていくしかないのかなと思います。

でもボクはむしろそれでいいと思います。
多摩川に生き物が帰ってくればいっぱい自然観察ができる。
釣り人も増え、憩いの場所もできる。
子供達の遊び場がひとつ増える。
そしてそんな経験をした子供達が次の社会を担う。

全て人間中心の考え方だけど確実によい社会だなと思います。

この問題は様々な意見があり面白いテーマだと思うのでいずれ本文でも触れてみたいなぁと思います。